Oizumi Kazunuki

sep 01 2021

フードバリューチェーン
チェーンマネジャーが牽引する農業イノベーション


宮城大学名誉教授
大泉一貫さま

少なくとも私は、学校で「農業は衰退するのが当たり前」と習ったような気がします。それは、一次産業である農業は、時代が変わると共に、二次産業、三次産業へと産業シフトが起こっているから、という明確な理由もあったと感じています。

このことは、下記図のように、日本の農業就業人口は減り続け、企業参入なども認められているにも関わらず、農業経営体数も同様に減り続けていることからも頷けます。

    (出所)「フードバリューチェーンが変える日本農業」より
    (出所)「フードバリューチェーンが変える日本農業」より

しかし、「フードバリューチェーン上にある様々な事業者と販売提携や技術提携をしながらマーケットインやイノベーションを図る農業を行うことで成長することは可能」と話すのは、宮城大学名誉教授で、書籍「フードバリューチェーンが変える日本農業」(日本経済新聞出版社)の著者であられる大泉一貫さん。

本書では随所に顧客や消費者などフードバリューチェーン全体を自らの世界に取り入れ、食と農の連携を図り、事業拡大・生産性向上に励んで大規模化した事例がいくつも登場しています。

    (出所)「フードバリューチェーンが変える日本農業」より

特に注目すべきは「大規模化」。畜産ではすでにはっきりとした傾向が出ており、養鶏でも酪農や養豚、さらには肥育牛でも、国際標準の規模にまで拡大し、すでにヨーロッパの規模と遜色のない経営が出現しているというのです。他にも、4~5年で100ヘクタール、200ヘクタールを超える稲作経営や畑作、野菜作経営が出現し、大規模化は例外ではなくなってきているのです。

「フードチェーン農業を行っている農業者は、日本を代表する農業経営者だが、彼らの経営が最初からそうだったわけではない。彼らも出発したときは小規模農家や中規模農家だったものが、マーケットニーズに気づいて成長するプロセスでこのシステムを作り上げ、いまや日本農業を牽引するまでになったのである。彼らは、イノベーターであり、農業ベンチャーでもある。」(本書より)

イノベーターであり、農業ベンチャーとして活躍する彼ら彼女らを、大泉さんは「チェーンマネジャー」と呼びます。大泉さんは日本全国の実例を実際に見て回るだけでなく、新潟食料農業大学の設立に関わるなど、後進の育成にも注力されています。

NAFU新潟食料農業大学 - 食の可農性を追求する



日本の農業の歴史を学術面から具に靴底を減らして見てこられた大泉さん知見に触れてもらいたいです。





【書籍紹介】
書籍:フードバリューチェーンが変える日本農業
   (発行 日本経済新聞出版)



  • 農家半減でも、生産性は倍増―成長農業これからの10年を描く。食品産業との連携や農業の成長産業化を主導してきた第一人者が、先進経営の紹介と統計分析で、2030年の農業を見える化!

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【スペシャルゲストプロフィール】
大泉 一貫(おおいずみ・かずぬき)

宮城大学名誉教授。新潟食料農業大学学術顧問。21世紀政策研究所研究主幹 1949年生まれ。74年東京大学農学系研究科修士課程修了。東北大学農学博士。東北大学助教授、宮城大学教授などをへて現職。