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OCT 26 2023

社会福祉法人慈仁会


理事長 石津早代さま



ー Q. ご沿革、法人名の由来を教えていただけますか。

A. 社会福祉法人慈仁会の法人としての設立は1993年2月です。 姉妹法人として1958年に設立された医療法人の近くに建てられました。今年で創立30年を迎え、現在31年目に入っています。医療法人とは現在も連携をしております。法人名は病院の創設者である私の祖父が名付けました。慈しむに仁義の仁と書いて、「じにん会」と読みます。深い思いやりや、慈悲深いという意味です。

祖父の始めた医療法人は精神科の病院でしたので、高齢の認知症の方々を診ている中で、そういった方々が住み慣れた地域で暮らせるようにと、病院の近くに社会福祉法人を設立したという思いがあったようです。







ー Q. 慈仁会さまの特徴や魅力を教えてください。

A. 兵庫県西宮市、六甲山の自然環境豊かな山口地区に山口苑、名塩地区に名塩さくら園という2つの施設を設けています。特別養護老人ホームに、デイサービス、訪問介護、地域包括支援センターといった居宅介護支援事業所等の在宅部門をそれぞれ併設しています。

すべての人を等しく慈しむ”慈仁”の心という基本理念があります。ですが当法人の場合は、理念を職員に伝えて実行するというよりは、職員の方たちが理念を作りあげてくれてきているような気がしています。法人職員の共通点が何かと考えた際に、まず「人として優しい」ということがあります。様々なご縁があり、慈仁会という場所に優しい方が集まってくださり、その人たちが基本理念を作りあげてきたと思っています。この西宮の北部で高齢者福祉をやりたいという志を持った方たちの集合体が慈仁会。トップダウンや、法人ありきということではなく、本当に職員が集まって慈仁会を作ってくれてると感じています。



ー Q. 人材教育について教えてください。

A. 慈仁会の枠組に職員を当てはめるということは全く考えていません。現在法人には190人ほどの職員がいるのですが、190人のレダー チャートを重ねた時に素敵な形になったらよい。という考え方です。職員が皆同じ形になることは全く望んでおらず、苦手なところは補い合い、個性を大切にして全員で1つのレダーチャートを作っていけたら良いなと思っています。

永年勤続20年、25年といった方もどんどん増えてきて大変ありがたいことです。家族といるよりも職員といる時間の方が長く、付き合いも20年30年の付き合いになる方も多くいらっしゃるので、「なんだかもう家族みたいだね」という話をちょうど昨日職員としていたところでした。込み入った話などを自然としてしまい ますよね。そこも魅力なのだろうなと思っています。



ー Q. 石津理事長が介護福祉の世界に関わられることとなった経緯を教えてください。

A. 東京の大学を卒業後、志望していたマスコミ、東京の番組制作会社に就職したのですが、厳しい世界でもあり道半ばで退職ということになりました。

子どもの頃からボランティア活動などをずっとやっていたこともあり、第2の人生というか次に仕事をするとしたら医療か福祉の仕事だと思い、大学の社会福祉学部に入りました。勉強をしながらアルバイトとして東京の特別養護老人ホームで働き始めた時に、介護の凄まじい現実を見ることになりました。もう30年近く前のことになりますが、職員の効率が優先されたケア、例えばおむつ交換介助の際に時間が無いからという理由でカーテンを閉めない、入浴介助の際にほぼ裸のような姿でタオルのみかけられて廊下に並ばされるなど、言葉は悪いですが収容所のようなイメージさえもたれるような、高齢者の人権が無いような状態でした。自分の福祉観との違いに苦しみ、大学が通信教育だったこともあり、関西に戻り、別の特別養護老人ホームで働き始めました。ノーマライゼーション、人権というものを非常に大切にされる法人さまで、自分の考えは間違っていなかったのだと思わされました。

別の法人さまで働いていたのですが、父が声をかけてくれたことがきっかけで平成12年に事務職として慈仁会に入職しました。少しずつ積み重ねていき、理事長にならせていただきました。







ー Q. ご利用者様が慈仁会さまに関わるキッカケ等のエピソードをお教えいただけますでしょうか。

A. 創立30年にもなりますと、当法人に職員として働かれていた方々が今、利用者さまとしてご利用いただく機会が増えてきています。複雑な気持ちではあるのですが、法人の裏方までよく分かっている元職員さんたちが「帰ってきてくれる」と私は思っているのですが、とても光栄な事でもあります。サービスを提供する側としても非常に緊張感もありますし背筋が伸びる思いです。ただ、ご利用いただく元職員さんも複雑なお気持ちだと思います。他のご利用者さまにはもちろんなのですが、元職員さんにはできる限りのことをして差し上げたいという気持ちになりますね。本当にありがたいことです。



ー Q. 「食べる」ということについてのお取り組みをお教えいただけますか。

A. 高齢の方は同じ量のカロリーを摂取しても痩せてきてしまう方がいらっしゃいます。必要なエネルギーをお持ちになられていないと、疾患にかかった際に、病気に勝てなくなってしまうので、エネルギー摂取、体重を健康管理のバロメーターとして見させて頂いています。

また、経口摂取の維持という点においても、往診に来ている歯科医師、歯科衛生士の方と協力体制をとり、口腔衛生の管理に力を入れています。経口摂取の維持ということが健康に大きく関わっていると感じています。



ー Q. 社会課題に対してのお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

A. 介護職員への処遇改善という話が国で出ています。数ある職種の中から介護職の処遇改善をしようという国策を立てていただけること、皆さまの税金を介護職員を中心にいただけるというのは本当にありがたい話ではあります。ただ、施設は介護職員だけで運営しているのでなく、生活相談員、管理栄養師、調理員、看護師、事務員、清掃員といった多くの職種でチームで運営をしているものですから、介護職員処遇改善ということになると他の職種の方が、自分たちはどうなるのか。と不安に感じたり、介護職員から生活相談員への人事異動をし辛くなる。といった問題もあります。

介護職員処遇改善は、介護職員不足に対しての策であるとは思うのですが、やはり皆様の大切な税金を当てていただくもの。単に頭数を揃えることが目的ではなく、介護職としての専門性の高さに繋がるような処遇改善の利用をしたいと思っています。

介護職のイメージ改善と称してパンフレット等の見た目を良くするといったことをよく聞くのですが、SNSがこんなにも普及している時代に、一瞬のイメージだけでは継続はできないと思っています。介護福祉士のプロフェッショナルな部分をもっと追求し、見た目ではない、プロとして格好いい仕事にならないと若い人を含めて来ては下さらないと思っています。

プロの介護福祉士がケアした高齢者の方がここまで自立支援につながった。介護福祉士のケアにより、最期に素敵な毎日を送れるようになった。というエビデンス、科学に基づいたプロとしての仕事にならないとこの介護業界に人は来ないと思っているので、そういったことに処遇改善を使わせていただかなければならないと考えています。





【施設紹介】
法人名:社会福祉法人慈仁会
所在地:〒651-1412 兵庫県西宮市山口町下山口1203番地1